こんにちは。夢の宮アネックスへようこそ。
管理人のEki-MAJOです。

本館の記事を久々に更新しまして。

自分で読み返して、今後は「女狐」的な女性は、終焉を迎えるな、と。

 
 (1:13)

映画で描かれた一番見事な「悪女」の最期ではないでしょうか?
(『乱』監督:黒澤明(1985)より楓の方の最期)

自らの一族を滅ぼされた恨みに燃えて、ついには婚家である一文字家(架空の大名家)を内から滅ぼそうとする楓(かえで)の方(原田美枝子)。
その目論見を見破るのが、いぶし銀のような、鋼のごとき見事な男の鉄修理(くろがね・しゅり、井川比佐志)。

武勇を誇った一族も内からの敵には弱かった。現代にも通じる何かの暗示のようだ。

楓の方の着る、鱗文様の小袖は、能楽では鬼女や妖狐(『殺生石』)の役に使われる。
それを斬新にアレンジした衣装デザインのワダエミさんのセンスが素晴らしい。
加えて殿上眉という古風な化粧法が、じわじわとせまる女の執念と恐さを表現している。

次郎の殿(根津甚八)を篭絡した楓の方は、妻の末の方(宮崎美子)を殺せと鉄に命ずるが、鉄はキツネの面を差し出して、「殿は、楓の方に鼻毛を読まれましたな」ととぼけて一言。(素敵!(≧∇≦))
(「殺生石」伝説や、玉藻の前の故事で、楓の方を「女狐」になぞらえている)

(今どき、「鼻毛を読む」って、言葉、知ってる人いるだろうか?)




女の武器を有効的に使う女性は、その手が通用しない男(女でも)が現れたら、滅ぶしかない。
(クレオパトラの武器が、オクタヴィアヌス(アウグストゥス)に通用しなかったのを想起されたし)

 
 (25:02)

「今こそ思い知ったか!女の知恵の浅はかさを」
「浅はかではありませぬ。一文字の家が滅ぶのをわらわはこの目で見たかった」

鉄も、ものも言わず、一刀のもとに切り捨てるのだから、(余計に苦しませないだけ)武士の情けというべきか。
飛びしきる血潮が、悪の生命力の逞しさを暗示するかのよう。

でも逃げも隠れもしないのは、女ながらも見事な最期。敵ながら天晴れ、という感じ。


この鉄役は最初、あの高倉健さんに打診したが、様々な都合もあり実現せず。でも名脇役・井川比佐志で良かったな。
(映画を見た健さんは、出ておけば良かったと後悔したという。高倉健版鉄首理も見てみたかったが)

このシーン、血のりが飛ぶ角度を何度もやり直したり、井川氏もなぜかNG連発で、大変だったらしいです。

 
(21:10)

原田美枝子さん、この時まだ20代だったんですね(驚)。貫禄あるな。細いけど。
撮影の合間に見せる笑顔は魅力的。もともと、表情が豊かな女性で、それを封印して「楓の方」を演じたのです。なんか、楽しそうだ。

今も現役の女優で活躍されてるのを見ると。結婚相手の都合で一時期、女優業から離れていたのが惜しまれる。
(化粧品のCMなどに出演されておられる)





ワダエミさんの(能衣装を現代的にアレンジした)豪奢な衣装といい、美術の豪華さと言い、歴史に残る映画でした。
(撮影が一時中断し、資金調達がストップした時は、ワダエミさんは「家を売ってでも払います」と言って、京都の職人さんに仕事を続けさせた話は有名)

主人公は、楓の方の義父の一文字秀虎(仲代達矢)ですが、影の(真の)主人公は楓の方ですね。義妹の末の方など、アップのシーンがほとんどない。(笑)
他に出ずっぱりなのは、秀虎と道化役の(文字通りの狂言回しの)狂阿弥(池畑愼之介)ぐらいなものか。

 
 (25:28)

最期に一人残った末の方の盲目の弟の鶴丸()のこの孤独なラストシーンですべてが浄化される。
奇蹟的にカラスがフレームインした「神のシーン」だそうです。
(鶴丸役は、当時、10代だった野村萬斎さん!私、数回、萬斎さんの狂言を拝見したことがある。萬斎さん、すごく顔が小さいの)


悪を見破る知恵の深さと、問答無用に切り捨てる力と。
これからの日本には、どちらも必要となるでしょう。

「女狐」的な女性、小○百○子、○田○子、カ○ラ・ハ○ス、平栗婆、まだまだいるな。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。
皆さまがお幸せでありますように。