こんにちは。夢の宮アネックスへようこそ。
管理人のEki-MAJOです。

先日、テレビを見ていたら、歴女の某アイドルが好きな刀にへし切長谷部(へしきりはせべ)をあげていました。

私は内心「へぇ、・・・ちゃん、『へし切長谷部』が好きなんだ。シブーい。だったら、『左文字義元(さもんじよしもと)』も、ぜひあげて欲しかったなぁ」

へし切長谷部とはこういう刀です。少しコワいエピソードを持つ刀です。
(今は、「へし切長谷部」で検索するとゲームの美形キャラばかりが出てきますが・・・(;^_^A)



一方、左文字義元(宗三左文字、義元左文字)は、かの今川義元の愛刀でした。

この刀は三好政長から、武田信虎(武田信玄の父)に渡り、さらに信虎の娘が駿河の今川義元に嫁ぐ際に引き出物として義元に贈られます。

今川義元はこの刀を愛用し、かの桶狭間の戦いの際にも持参します。そして運命の桶狭間合戦が起きるのです。

 左文字義元

その戦いで義元を打ち取った織田信長が戦利品として分捕り、自らの佩刀としました。

この刀を手に入れて後、確かに、信長は「天下取り」への道を歩むことになる。

信長は、刀の長さを自分仕様に研ぎ縮め、愛用しておりました。
(2尺6寸から2尺2寸へ。信長はコンパクトサイズが好きだったのかな?ちなみに刀の標準的な長さは2尺4寸)

あの本能寺の時でさえ一緒でした。

焼かれて灰燼に帰すところを、信長の侍女だった松尾大社の祀官の娘が抱えて逃げ、豊臣秀吉に渡したと言われています。

更に豊臣秀頼から、徳川家康に贈られたという、まさに天下人の刀。
偶然、家康は大阪の陣の時も、この刀を帯びて出陣しました。

三好→武田→今川→織田→豊臣→徳川と、なぜか戦国の一流どころと天下人の間を渡った刀です。(なんかスゴイ)

 左文字義元 銘
 
いやはや、何ともすごい銘です。

表に「織田尾張守」 裏には「義元討」と、桶狭間合戦の日付(永禄三年五月十九日)がハッキリと読めます。

「義元、獲ったどーッ!ドヤ~~~ッ!(超訳)」という信長の心の叫びが聞こえてきそうです。(笑)よほど、嬉しかったんでしょう。

左文字義元は、さらに代々の徳川将軍家の佩刀として受け継がれ、明治になって徳川家から、京都の建勲(たけいさお)神社(祭神・織田信長公)に奉納されました。

今は神社のご神宝なので、展覧会などにもめったに貸し出されることはありません。幻の名刀です。



(茶器にも3人の天下人の間をめぐった、「初花」の茶入れというすごい名器がある。『へうげもの』にハマった時に多少、勉強しました)



(一部、残酷な表現がありますので、苦手な方はご注意されて下さい)

近年、今川義元については研究と再評価が進んでおりますが、シェイクスピアが「終わりよければ すべてよし」というのはよくぞ言ったもので、最期のあり様が歴史上の人物の絶対的な評価につながるのは仕方がない。

今川義元も武田勝頼も優秀な武将ではありましたが・・・、相手が悪かった。(笑)
織田信長という人は、当時の常識がほとんど通用しない人でしたから。


信長 文庫版 (池上遼一) コミック 1-5巻セット (MF文庫 )
原作/工藤かずや・作画/池上遼一
メディアファクトリー
2008-09-03


左文字義元について最初に知ったのが、この漫画。池上遼一氏の描く信長はシビれるほど、カッコよくて素敵です。

個人的に私は、鎌倉や室町の由緒正しい古刀が好きです。
(菊一文字則宗とか。あの沖田総司の佩刀と言われるのは伝説のようですが。他には源義経の愛刀だったと言われる薄緑)

「刀にも運否天賦の一生がございます。この刀は誕生(うま)れた永正(足利末期)のころなら知らず、その後は一度も大名大身のお武家の持ち物になったことがない。ながく出羽の草深い豪家の蔵にねむり、数百年ののち盗賊に盗まれてやっと暗い世に出た。その賊が、手前どものほうに持ち込んだ、といういわくつきのものでございます」
容易ならぬことを老人は明かした。その筋に聞こえれば、手に縄のかかる事実(はなし)だ。それを明かすとは、どういうことだろう。
「見込んだのさ」
老人はぞんざいにいい、さらに語を継いだ。わざわざ和泉守兼定をさがしているというこの浪人が、盲人の勘で、ただものではない、と思ったというのである。
「数百年間、この刀はあなた様に逢いたがっていたのだろう。手前には、なんとなくそういうことがわかります。五両、それがご不満なら、さしあげてもよろしゅうございます。お嗤いなさいますか。道具屋を五十年もしていると、こういう道楽もしてみたいのさ」
  司馬遼太郎 『燃えよ 剣』(新潮社)

『燃えよ 剣』で、土方歳三が愛刀、和泉守兼定と出会うシーンです。


刀剣は誰に使われるかで、その運命が決まる。人にも運命があるように、刀にも運命がある。
それがなんとも、ドラマチックです。

刀剣女子と言われるほどの知識はもち合わせておりません。
私はゲームはしませんが・・・しかし、刀剣を美形や美少女キャラに擬人化したアイデアは神でしょう。


(今年の『The ICE』は、皆はっちゃけ過ぎて楽しそうだ・・・)


古代の日本の剣は、両刀の「剣」でしたが(草薙剣など)、ある時から片刃で反りをくわえた「刀」に変ってゆく。
蝦夷の使っていた刀(蕨手刀)にヒントを得たと言われる形が日本刀の原点になったのです。

この形は馬上から振り下ろして、敵を迎撃するのに適していた。
そして、刀匠が鍛える鉄は世界一の強度を誇ります。機械で製鉄しても再現できないそうです。

そして何より、美しい。機能と美しさが両立する日本刀は、日本人の精神にも通じます。


そして今年は、なんと偶然にも今川義元公、生誕500年目の年だとか。




討つ人も 討たれる人も もろともに 如露亦如電 応作如是観(にょろやくにょでん おうさにょぜかん)
 大内義孝 辞世

(如露亦如電 応作如是観は「人生は露のようにはかない、まさにそう思い知るべきだ」という意味の禅語の一句)


 ルパン三世 石川五ェ門
 別に意味はありません(笑)



最後までお読みいただき、ありがとうございました。
皆さまがお幸せでありますように。