こんにちは。夢の宮アネックスへようこそ。
管理人のEki-MAJOです。
3月17日は、ルキノ・ヴィスコンティ伯爵さまの命日でございました。合掌( *´艸`)
ヴィスコンティは難解と言われますが、20代の頃から見てきた私にとっては、これほど分かりやすい映画もなかったです。しかも豪華絢爛で、目の保養。
ただし、体力は必要になります。なにせ、時間が長い、長い!(笑)。
今回のテーマは、『山猫』です。
シチリア貴族の末裔である、ランペドゥーサが自らの曽祖父をモデルにした小説『山猫』の完全な映画版です。
後期のドイツ三部作(『地獄に堕ちた勇者ども』、『ヴェニスに死す』、『ルードヴィヒ』)にいたる前の、ヴィスコンティ前期の傑作で代表作です。
タイトルの『山猫』は、サリーナ公爵家の紋章からきています。
『山猫』の舞踏会のシーンより。
映画史上、もっとも贅沢なシーンと言われました。なにせ、本物のシチリア貴族がエキストラをしています(!)。
映画の中とは言え、19世紀のシチリア・パレルモの豪奢な社交界が甦ったかのような錯覚に陥るほど。
約50年前の映画と思えないくらい、豪華絢爛です。
シチリアの大貴族、サリーナ公爵、ドン・ファブッリツオ(バート・ランカスター)の甥・タンクレディ(アラン・ドロン)と新興成金の娘・アンジェリカ(クラウディア・カルディナーレ)の社交界デビューのシーンです。
アンジェリカの父は正確には新興成金というよりマフィアの元祖みたいな実にいかがわしい男。
タンクレディとアンジェリカは、典型的な“貴賎結婚”のカップルですが、サリーナ公爵は、実は凡庸な長男に失望していて、一族の生き残りを頭が切れて抜け目ない甥に賭けているので、こんな結婚を(内心の嫌悪感を隠しつつも)、平気で後押しできるのです。
タンクレディは、最初、公爵の長女・コンチェッタといい仲だったのに、美しいアンジェリカが現われると、あっさりと袖にし、“乗り換える”。そんな男です。
公爵は、自分の娘のコンチェッタがタンクレディを愛しているのを分かっているのに。「お父様はひどい」と娘に恨まれるのは百も承知で、一族の生き残りのためには冷徹な判断も平気で行う。
野心家のタンクレディには、内気なコンチェッタは相応しくない、持参金も充分に持たせてやれないと現実的な判断を下した結果です。これが貴族の冷徹さというものでしょうか。
やがてくるであろう新しい時代は、貴族にとって都合が悪い時代になるかもしれぬと滅びの予感に身をまかせつつ、サリーナ公爵自身はあえて何もせず、優雅に年老いてゆく。
(まさにヴィスコンティお得意のテーマ、デカダンス(退廃)です)
シチリア島は2500年もの間、異民族に支配されてきた歴史と現実がすぐに変わるものではないことを公爵は痛いほど分かっているからです。
公爵自身、ドイツ系のブロンド(金髪)に白い肌、筋肉質の長身といった外見です。
それほど、しがらみに縛られない若いタンクレディは「現状維持のためには、改革が必要だ」とドライに言い放つ。
その意味は、これまで通りシチリアの支配層でいたいのなら、支配者のスペイン・ブルボン家の打倒が必要だということ。さすがに、公爵は、そこまで割り切ることが出来ない。
しかし、新時代を生きるであろうタンクレディを惜しみなく後援しながらも、公爵自身はあえて何もせず傍観するのみ。
タンクレディと恋に落ちたアンジェリカはさすがに己の立場をよく分かっているので、ダンスの名手と言われる公爵に舞踏会で「一曲踊って欲しい」と懇願する。「公爵家の嫁」として世間に認めてもらうために。
(この長い長い舞踏会のシーンがヴィスコンティの真骨頂で、カットされていない完全版で見るべきです)
公爵とアンジェリカの息がぴったりなのに、タンクレディが軽く嫉妬を覚えるほどに、サリーナ公爵のワルツは見事なのでした。
(アラン・ドロンは野心家で少しいかがわしい役柄だと実にはまる。全盛期のアラン・ドロンの完璧な美しさが拝める映画。アラン・ドロンの不幸は長生きし過ぎたことでしょうか?)
このワルツが、文字通りサリーナ公爵、最後のワルツとなりました。
名コスチュームデザイナーのピエロ・トージの手によるアンジェリカのクリノリン・スタイルのドレスが、ため息が出るほど、きれいです。
若い時のクラウディアはこんなに細いのに、きついコルセットで何度も気絶しかけたとか。貴婦人は大変です。
この結婚で、没落貴族のタンクレディは嫁の実家の莫大な財産と領地を手に入れ、一方で、近親結婚で澱んだ貴族の血脈に新鮮な“血”がもたらされることになります。
ルキノ・ヴィスコンティ 14歳
そう言えばヴィスコンティの両親も“貴賎結婚”でした。
父は中世から続くヴィスコンティ・ディ・モロドーネ家の公爵・ジュゼッペ、母はミラノの製薬会社の社長令嬢。
『山猫』に描かれたほど、露骨な貴賎結婚ではありませんでしたが、貴族の名誉と新興階級の富の結びつきには違いない。
ヴィスコンティの両親は、後に離婚。映画の中で描かれなかったけれど、タンクレディとアンジェリカの結婚もやがて破綻を迎えます。
母 カルラ・エルバ
4番目の子供のルキノは“白鳥のように”美しく優雅な母、カルラ・エルバを熱愛していました。
優雅で美しい母を愛しすぎたために、他の女性が愛せなくなってしまったほどに。
(生前からバイ・セクシャルであることを公言していた。しかし、この人はホモ・セクシャルに近かったと思われる)
(後に「(映画の中で)母の記憶を甦らせようとした」のが、かの『ヴェニスに死す』。タジオの母役のシルヴァーナ・マンガーノには、母、カルラ・エルバの衣装の趣味や面影が濃厚に投影されている)
若い時、パリに遊びに行き、そこであのココ・シャネルと知り合い(!)、シャネルからフランスの名映画監督のジャン・ルノワール(画家のルノワールの息子!)を紹介され師事したことが、その後のルキノの生涯を決定づけました。
なにせ父親は、ミラノのスカラ座の大パトロン。スカラ座のボックス席で夜ごとオペラを子守唄代わりに聞いて育ったのです。組み込まれたものが違いすぎます。
若い頃は、社会主義にかぶれ、「赤い公爵」と噂されたが(あの近衛文麿がアカい京都大学に進学したのとなんと似てることか!)、こういう組み込まれたDNAはやがて出てくるものですね。
やがてヨーロッパで、いや世界で一番ゴージャスな映画を撮る監督として歴史に名を残しました。
他にもオペラや舞台の演出で名を馳せました。マリア・カラスとの親交は有名。
人は結局「あるべきようは(明恵上人)」のようにしか生きられないということか。
ルキノ・ヴィスコンティこそが『山猫』の息子のような存在であり、まさに原作がほぼ理想的に映画化された奇跡の映像作品です。
完璧主義者のヴィスコンティは、美術も小道具も可能な限り、本物を使用しているせいもあります。
見て、欧州の香気に存分に酔え。
時には退廃の腐敗の悪臭も伴いつつ。
華麗なる大舞踏会の傍ら、控室には貴族たちの尿瓶がズラッと並べられている。そんな醜悪な風景もヴィスコンティはさりげなく入れてくるからです。
(かのヴェルサイユ宮殿は臭かったというのも、実に納得できる光景である)
ヴィスコンティ家の紋章。(Wikipediaより)
人を食らう大蛇は、生と死、火を意味し、この紋章をルキノ・ヴィスコンティは密かにこよなく愛していたという。
(ヴィスコンティ家の君主たちは、変人の“暴君”を多く輩出してる。傍系とはいえ、ルキノ伯爵もある意味、変人で、さすがその歴史とDNAに恥じない、というべきか)
町山智浩の映画塾!「家族の肖像」<予習編>【WOWOW】#197
町山智浩の映画塾!「家族の肖像」<復習編>【WOWOW】#197
↑博覧強記の映画評論家・町山智浩氏のヴィスコンティ解説。よろしければ、ご覧になってください。
町山さん、何もそこまで仰らなくても…。町山さんだから、まぁ、ええか。(笑)(;^_^A
ちなみに「ヴィスコンティ」とグーグル検索すると、「ヴィスコンティ タロット」と出てきます。
ヴィスコンティ家には、現存する最古のタロットカードが伝わっています。
もとは貴族の絵画コレクションを画家にカードに写させ(だから「死」や「悪魔」など一見恐ろし気なカードも含まれる)、最初はカードゲームとして遊んでいたそうですが、それが次第に占いの道具に変化してゆきました。
確かに、タロットの小アルカナは、トランプカードの原型です。
復刻版が販売されてますが、金彩をふんだんに使い中世絵画を思わせる贅沢なカードです。(大アルカナのみ)
貧乏性の私は、こういう美しいカードはかえって普段使いしにくいんですが。(使わず、しまっておきたくなるので(笑))
タロット占いは、中世から数えても数百年の歴史があります。まったく当たらないなんてことはあり得ません。
占いを利用すると、やがて、占いから“復讐”される運命が待っています。
【追伸】
マズい、数キロだが太ってしまった。冬は、食べ物が美味しくてつい油断しました。お腹周りが・・・
ここで修正せねば。これから、ダイエットモードに突入します。
金星に2つも星座が入っているので、耽美派の私としては、これは断じて許せない!(笑)
自分でもいろいろと試してみます。(腰割に、チベット体操にスワイショウにカラーブリージングに、腸洗浄に全部やり直して試す!)
腹周りのぜい肉を退治するぞーっ!! オーッm(; ・`д・´)/
(カテゴリ:生活の中の心得>体の浄化法|夢の宮)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
皆さまがお幸せでありますように。
コメント
コメント一覧 (4)
CCがイタリア映画界の肝っ玉母さんですか、素敵ですね。最近見た写真も明るい笑顔で良い感じでした (*^^) イタリア・ロンバルディア州がコロナ感染で大変なようで、ショーマチカが2016から3年連続で優勝したロンバルディア杯の開催都市・ベルガモが悲惨なことになっているみたいです。医療関係者も相当疲弊されていて医療崩壊ですね。日本はそれを避けようとして頑張っています。今は試行錯誤の状態なんでしょうね。治療薬も色々試されているようですが早く願いたいです。ホント、イナゴも心配です。オリンピックも延期かな?悪■の土俵入りもお流れね。天皇の英国行もキンペーの来日も無期延期、立皇嗣の礼は予定通り、それだけで十分、祝宴なんて必要ないです。
西村再生相の記事ですけど、減税に肯定的と考えて良いのかしら?
https://jp.reuters.com/article/japan-nishimura-taxcut-idJPKBN21407C
実現に向けて頑張って欲しいですね。余談ですが10年ぐらい前に西村さんに会ったことあります。爽やかな好青年でした。
ランビ伯爵のインタビューありがとうございます。
「楽しむ」これが実践できる環境に身を置くことが出来て良かったです。「鍵山君たちと一緒に成長したい」なんてね、憎いこと仰いますわ !(^^)!
ホリエモンと峰先生の動画の後編です。よろしければ(;^ω^)
https://www.youtube.com/watch?time_continue=6&v=qICAP83rDck&feature=emb_title
コロナコロナとテレビは賑やかですが、正しい知識はネットから得ております<(_ _)>
Eki-MAJO
がしました
更新をありがとうございます。
バート・ランカスター、アラン・ドロン、クラウディア・カルディナーレ、豪華ですねぇ。
先日アラン・ドロンの最近の映像が流れていて、おじいちゃんになってました(;^ω^)。CCは81歳でご健在、最近の写真を見ても中々なゴージャス感だったような。ソフィア・ローレンとかイタリアの女優さんって個性的です。貴族の世界も生き残るためには知恵とお金が必要なんだな...。貴族を演じても胡散臭さが漂うアラン・ドロンって、なんとも..美しいだけにね、罪な感じがします。
「あるべきようは(明恵上人)」意味をきちんと調べてみました。素敵な言葉のご紹介有難うございます。心に留めておきます(__)
こちらの動画、偶然見つけまして、ちょっと面白いなって思いURL貼らせて頂きました。
こちらの先生説明が分かり易くって良い感じです。まだご覧になっていなければ。
https://www.youtube.com/watch
time_continue=43&v=xDBtQCQ6fWk&feature=emb_title
16日付け樹君ツイッターではショーマチカ帰ってくる(既に帰っている頃?)ようですね。スイスが今大変な状況で心配です。医療機関が後10日で駄目になるなんて報道もありますけど、イタリア・フランス・ドイツに囲まれてますものね、特にイタリア北部が酷いから。
まだアフリカ・中東。南米の情報が上がってこないけど、あちらも広がっていそうですね。
Eki-MAJO
がしました